May fifth





見渡す限りの青と緑を清々しい気分で見る。昨日は有り得ない程土砂降りだったのが、一夜明けた今日は綺麗に晴れ渡り、遠くの山が青く浮かんでいる。横目にちらりと見えた鯉幟は昨日の雨に打たれだらりとなっていた姿とは裏腹に、竜のごとくゆうゆうと空を泳いでいる。いいものだ、と呟く。
昨日の姿は、子供の成長を祝福するというより、成長し竜になれず死んだ鯉幟としか見えなかった。そんな悲しいものはふさわしくない。それに、鯉幟はそもそも五月晴れの空が似合うものなのだ。
そういえば昨今の鯉幟というと、マンションのベランダに小さいものがかけられているだけだ。それではあまりに味気ない。やはり空を泳いでいなければ鯉幟の味は出ない、と思う。
田んぼの中の川の上をゆうゆう泳ぐ鯉幟。古き良き文化、と今度は少し大きな声で呟いた。



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